日本列島と周辺海域には海と陸の4つのプレートが集まり、地震活動は極めて活発です。防災科学技術研究所の観測網によると、1日あたり平均400~500個、数分間に1個程度の頻度で地震を検出しています(ほとんどは規模の小さな無感の地震)。海域には数多くの地震が発生していますが、陸域の観測網で、陸から遠い海域の地震を十分正確に検出することは難しく限界があります。津波の観測も、沖合の限られた海域に小規模な海底津波観測システムが設置されているに留まり、海域における広域の基盤的な観測網整備の重要性が指摘されてきました。《地震調査研究推進本部「今後の重点的調査観測について」(平成17年8月)》。
2011年の東北地方太平洋沖地震の後も、東日本太平洋沖では活発な余震活動が続いています。また、この地震の影響により日本海溝と千島海溝沿いの周辺海域でも、引き続き大きな地震が誘発され、今後も強い揺れや津波が発生し、襲来する可能性があります。
また、東北地方太平洋沖地震により力のバランスが変化して、震源域の余震の活動とともに周辺海域のプレート境界と内部が不安定になっていることから、大規模な地震が誘発され、津波を伴うことが懸念されます。例えば、日本海溝の外側(アウター)の太平洋プレート内でアウターライズ地震(*)と津波の発生が考えられます。
今回の整備事業により、海域を高密度に覆うケーブル式海底地震津波観測網での常時リアルタイム観測が可能となります。これにより、海域の地震活動の情報が飛躍的に増え、地震・津波の災害防止に貢献することが期待されています。
日本海溝付近(太平洋沖約200km辺り)で地震・津波が発生した場合には、地震の発生を現状より最大30秒程度早く検知できます。また津波の発生に関しては、現状よりも最大で20分程早く検知することが可能となります。
東北地方太平洋沖地震によって発生した地震波のシミュレーション。(防災科学技術研究所地震・火山防災研究ユニット主任研究員 齊藤竜彦)
東北地方太平洋沖地震によって発生した津波のシミュレーション。(防災科学技術研究所地震・火山防災研究ユニット主任研究員 齊藤竜彦)