平成14年10月15日
防災科学技術研究所
防災科学技術研究所では、2002年8月12日から日にかけて63年ぶりに噴火した伊豆鳥島の活動状況把握のため、干渉SAR技術を用いて地殻変動の解析を行った。SAR画像は、RADARSAT衛星が2002年8月27日と2002年9月20日に撮影したものを用いた。
衛星軌道に微調整を施して得られた図1の位相干渉画像から次のことが分かる。
噴火後の2002年8月27日から9月20日の間に、大きな地殻変動はない。ただし、後述の理由により一様な地殻変動が存在していても検出は困難。
島の中央部と西岸の初寝崎付近に局所的な隆起が見られる。島の中央部が、衛星方向に最大2cm弱、相対的に移動した。水平変位を無視すると、隆起量は約2.5cmになる。
衛星の軌道に微調整を施す前の画像(図2)では、島の北西岸が隆起し、南東岸が沈降(相対移動量2cm程度)しているように見えるが、衛星の軌道精度に起因する誤差の範囲内である。
通常は衛星の軌道を、地殻変動が生じていない地域で干渉縞が現れないように、微調整して軌道精度を高める。しかし、解析に用いた画像では伊豆鳥島以外の陸地が存在しないため、軌道の精度改善ができない。このため、全島にわたる一様な地殻変動の解析は困難であった。
なお、図1は、海岸線での変位が少なくなるように軌道の微調整を施したものである。島の中央部と初寝崎付近の局所的な隆起が図1と図2の双方に現れており、これらの局所的な隆起の存在が裏付けられる。
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図1: 海岸線での変位が少なくなるように軌道の微調整を施した位相干渉図 |
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図2: 軌道の微調整を施す前の位相干渉図 |
(B⊥=6.52m,B|| =20.40m,δyaw= -0.000283deg.) |
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(B⊥=6.52m,B|| =20.40m) |
注:図1,図2の等高線は、国土地理院発行の数値地図25000による。
連絡先:防災科学技術研究所 防災基盤科学技術研究部門 大倉 博
和田 裕
固体地球研究部門 鵜川元雄